水土里ネット　みやたけ　手取川宮竹用水土地改良区

宮竹用水の由来

宮竹用水は手取川から梯川（かけはしがわ）の間の能美平野を潤す県下第2の用水です。
中世には川北町の北辺を流れていた手取川が、藩政初期の元和年代の頃から南へ移動を始め、現在の川筋になり正徳〜享保年間（1711〜1735）に手取川から用水の取り入れが完成したとされています。
その後の地方文書には「宮竹八ヶ用水」などの名があり、寛政11年（1799）6月ごろの水懸役高（みずかけやくだか）は宮竹・八ヶ両用水で草高（くさだか）4万石と記されています。
能美郡詩によれば「宮竹用水は、手取川南岸に取水口を有し、本郡北部の八ヶ村のかんがいを為すものにして、明治29年迄は取水口を三ヶ所に分ち、・・・」との記述があり、「宮竹八ヶ用水」から八ヶ（村）を取って名称付けされたものと考えられます。

取水施設の整備

1. 宮竹用水取水口

   明治前期の宮竹用水は今の灯台笹（とだしの）・宮竹町地内で3ヶ所に分け取水していました。
   明治18年に石川県は手取川を直轄管理とし、治水事業の一環として用水口の合併を計画し、大洪水での頓挫（とんざ）後の明治30年に再着手しました。
   従来の場所より六百間（1,086m）上流の岩本町地内天狗山東の御座ヶ渕に取水口を移し、水路トンネル（371m）を開削し、堀割（ほりわり）水路715mを新設して従来の水路に接続しました。

   

2. 七ヶ用水取水口の合併

   一方、手取川右岸の七ヶ用水は明治36年に取水口合併事業により、宮竹用水合併取水口の上流の場所で取水口の1本化を行ったため、その後の干ばつ時における七ヶ・宮竹両用水の水争いが絶えませんでした。
   手取川水力発電会社は七ヶ用水本流の沈砂池に白山（しらやま）発電所建設計画し、発電用水取入堰堤（えんてい）（今の白山（しらやま）頭首工）を七ヶ用水取水口の上流800mに設け、昭和12年に発電を開始しました。
   そこで、農林省は直轄事業で、農業取水量を増加させるためにこの白山（しらやま）頭首工堰堤（えんてい）を50cm高くすることとし、昭和26年に国営事業が完成、通水しました。

   

3. 新分水協定の成立と七ヶ用水・宮竹用水の合口

   七ヶ・宮竹両用水の毎年の水争いから、昭和25年に農林省により大日川ダム計画が立案され、昭和35年の着工を機に宮竹用水永年の懸案だった耕地面積による分水比3:1による分水協定が幾度にもわたる協議を重ねた末、昭和36年4月に成立しました。
   この新分水協定に基づき、七ヶ用水の白山（しらやま）頭首工を合口取水堰（しゅすいぜき）（既設のまま利用）として、宮竹用水の取水も同時に行うこととし、天狗橋下流の七ヶ用水幹線水路で分水し手取川を逆サイフォンで宮竹用水に接続しました。昭和42年3月のことです。
   以後手取川ダムの完成もあり、百年に一度と言われる平成6年の大干ばつにおいても七ヶ用水・宮竹用水では安定した農業用水が確保され、水争い・番水がなくなりました。

4. 七ヶ用水・宮竹用水取入口の変遷

   

近年における宮竹用水の変遷

1. 用水施設の近代化の始まり

   昭和17年に発電と農業用水の増大を図るため、農用地開発営団により、白山堰堤嵩上（しらやまえんていかさあ）げ工を計画、昭和19年に着手しましたが、太平洋戦時下であり、物資の欠乏と労力不足のため一時中断しました。
   戦後昭和23年に農地開発事業として農林省直轄事業として引き継いで実施され、この事業の中で宮竹用水の天狗壁堰堤（えんてい）の嵩上（かさあ）げ、取入口の水門化、隧道（すいどう）及び水路改修、沈砂池（ちんしゃち）、管理道路を同25年3月に完成し、毎年の洗堰（あらいぜき）工事の無駄と取水の円滑化が図られました。〔国営手取川農業水利事業〕
   しかしながら、七ヶ用水との分水比7対1による水量では水不足は依然として解消できなかったため、昭和23年、旧辰口町出口、北市、徳久地内に集水暗渠（あんきょ）を着工、同25年完成させ、下郷用水地域の用水補給を行えるようにしました。

2. 主要幹線水路の大改修による干ばつ被防止

   宮竹用水管内の上流部は、地層が礫層（れきそう）で浅耕土地帯のため、水路や耕作田の漏水は干ばつになればなる程ひどく、その被害は毎年のことでした。このため国営事業の下流接続部の幹線用水路である上郷（かみごう）の他、下郷（しもごう）・得橋（とくばし）・山川（やまかわ）の各用水路の改修に、昭和26年より着手し、同39年3月に全工事を完成しました。
   一方、管内下流部の湿田地域では、西川・根上排水路の設備改良と機械排水により乾田化を図り、もって土地利用度を高め食糧増産と農業経営の安定向上を図っています。〔国営附帯県営手取川沿岸（宮竹用水地区）改良事業〕

   

3. 昭和36年4月20日の分水協定成立に伴い、同年8月に分水工を計画変更に組み込み、同38年分水工の着手、同42年3月に宮竹逆サイフォン工が完成し、ここに待望の安定した農業用水が手取川左岸流域へと流入することとなりました。〔国営附帯手取川地区土地改良事業〕

   

   七ヶ（しちか）用水から宮竹用水へ水を送る宮竹逆サイフォン

   

4. 確保された用水の効率的利用と農業生産基盤整備

   大日川ダム、分水工の完成とともに水量が確保されましたが、必要な水量を流下させる各幹線・支線・内線はまだ粗末な状況にあったため、高度経済成長時代に他産業に遅れることなく生産性向上のため、これらの水路の補修、改良、附帯する水門・堰（せき）の改良事業を行い、これまで手の回らなかった排水改良事業や各施設の近代化を推進しました。
   また、石川県内で初めての農業用水を利用した上郷（かみごう）発電所（現：宮竹用水第一発電所）が平成7年3月に完成しました。この小水力発電は農業水利施設の維持管理費の軽減を図るため、一連管理体系下にある土地改良施設の操作に必要な電力の供給することを目的とした自家用発電所です。
   そして、発電と自家消費する時期・場所・量が異なることから、発電した電力は北陸電力（株）へ売電されることを特徴としています。